先日「岡山大学・川崎医科大学耳鼻咽喉科市民公開講座」に参加してきました。テーマは「~難聴者の生活改善にむけた人工内耳の可能性 ~」というものです。
人工内耳は通常の補聴器とは違い、外科的な手術を行い、頭部皮膚下に埋め込まれた受信装置から内耳となる蝸牛部分へ電極を通し、直接音を送る仕組みとなります。
主に重度感音性難聴者に適用されることが多く、そこには通常の補聴器では補うことのできないレベルの難聴者への適用となるようです。
公開講座では実際に人工内耳の手術を行い生活をしている二人のケースが本人参加の発表があり、実体験に基づく感想を聞くことができました。
とくに子どもが生まれたばかりの頃の難聴発見により、当時は山陰に住んでいたご家族の話は印象的で、山陰地方の病院ではこれ以上の治療による改善は見込むことができず、現状を受け入れながら生きていくしかないという医師からのお話で、それこそネットで世界中を調べまわり「人工内耳」の存在に辿りついたそうです。 山陰地方では人工内耳を取り扱うことの病院がなかったそうで、当時は神戸市民病院での取り扱いを知り、祈る気持ちで受診を行い手術を行うことを決めたそうです。
結果的に子どもは2〜3歳の頃の映像を見ることができ、歌を歌うレベルにまで到達できていた様子でした。現在は中学生にまで成長しており、野球やスポーツもできるようになっています。ちなみに子どもは女性です。
ご本人のスピーチも聞くことができ、発音は通常レベルではないにしろ、内容の分かるレベル聞くことができました。
もう一人の方は年齢は不明でしたが恐らくは50歳代後半ぐらいの方であろう男性でした。急な眩暈などに何度となく襲われ、気がつくと聴力が愕然と低下、片方の耳はまったく聴こえない状況になっていたようです。入院と検査をする過程のなかで人工内耳の存在を知り、医師からの勧めもあり手術をしたそうです。それから2年ぐらい経過している様子でしたが、スピーチにおける発音は聴力低下の影響が見られるものでした。
個人的に後天性での聴力低下でこんなにも早く発音力が低下していることに驚きました。仕事も転職されたようで、これにもどのような過程があったのか詳しく知りたいとも思いました。年齢的にも転職が困難であることは予想され、その後のご本人のQOLにどれほどの影響があったのか。
まとめ
人工内耳に関してですが、通常の補聴器では補うことのできない難聴者への有効性を知見として得ることができたように思います。
そんな中でこの機会に知ることのできた情報をリストアップしたいと思います。メリット・デメリットがあり、自身の状態をしっかりと理解した上でひとつの選択肢としてあるのだということを知る必要があるでしょうか。
メリット
- 人工内耳は手術が伴うので医療保険が適用されます。
両耳埋め込み手術でも医療高額療養費制度を利用することで20万円以内で行うことができるようです。
通常350万円必要だそうです。 - 手術も半日程度で終わることが可能
- 通常の補聴器では補えないレベルの難聴者への有効的な手段として、高い効果を期待することができます。
- 一度手術をすると埋め込んだ受信機は基本的にはずっと利用が可能です。
通常の故障の場合は再度手術で入れ直すことができるようです。 - 最近の人工内耳はiphoneの専用アプリである程度制御が可能なようで、電話による通話やBluetoothによる音楽を聴くこともできるようです。
※Androidは現状非対応
デメリット
- 構造上、試着という概念がありません。
通常の補聴器は試着を行い、どのような聞こえになるのか試すことができます。
そのため人工内耳は不可逆的なものとなります。 - 外側にある送信機は経年劣化で故障することがあるそうです。
経年劣化による故障は保険適用になりますが、自損による故障は自己負担となることがあります。
片方80万円するそうで、両方落としたり破損させてしまったりすると160万円の自己負担になります。
※iphoneのアプリにより落とした場所は記録されるそうです。紛失捜査には役立ちます。
万が一に備え紛失保険に加入していた方が良いかもしれません。 - フィッティング作業が長く及ぶ
2〜3ヶ月に一度、専用の医療機関に行き、言語聴覚士のもとフィッティング作業を行う必要があるようです。
これは利用者には、なかなか負担です。平日に行く必要があり、お仕事をしている場合、お休みをする必要があるかもしれません。 - 通常の補聴器店では取り扱いが不可
手術がともなう医療機器なので、巷にある補聴器店では一切の取り扱いができません。 - 男性の場合、送信機がかなり目立つ
女性は髪の毛に隠れるそうですが、男性は目立つようでそうした外見の受け入れや慣れていく必要がありそうです。
今回の参加で得られた知見は以上となります。詳細な情報においては差異があるかもしれません。
そのため気になる方は、やはり近くの専門の医療機関での情報獲得をする必要があります。まずは皆さまのちょっとした情報獲得のお役に立つことができれば幸いです。