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Column コラム

何故、いま補聴器の取り扱いをスタートしたのか。第一章

 補聴器の販売には「管理医療機器 販売業・貸与業 届出済」が必要です。これを取得するためには補聴器取扱店に1年間以上従事することが必要となります。既に自身の事業を起業した中でこの実現は不可能であり時間を要することになりました。もうひとつの道筋は社内に大学での情報工学部系修士を得ている人が居ることでした。幸いにして弊社にそうした学部修士を得ているスタッフが在籍しており、自身の補聴器に掛ける思いを伝え協力して貰える運びになりました。

管理医療機器 販売業 貸与業 届出済証

 さて「なぜ補聴器の取扱をしたいのか」ですが、それは自分自身が補聴器業界に疑問を持つことが多かったためです。人生ではじめて補聴器を使用しはじめたとき、岡山大学病院の耳鼻科より紹介された補聴器専門店へ何の疑問も持たずに行ったのですが、その時の衝撃はやはり高額であったことです。見た目の小ささとは裏腹に10万・20万以上する補聴器、内心ビビっていましたが、浅はかな当時の僕は脳裏では常に定時価格の3割負担を逆算していたのです。そう補聴器は医療機器なのだから健康保険が効いて3割の自己負担で良いと考えていたのです。そのため25万の補聴器あれば約8万ぐらいかと、8万ぐらいであればなんとかできるかもといろいろ算段していました。

 しかし、その浅はかな思い込みは当然にして脆くも崩れ去ります。補聴器専門店の方からは「補聴器は全額自己負担であり保険適用はされません」と告げられ、もはや眼前は真っ暗というかパニックになり激しく動揺してしまいました。
しかも当時は現在以上に支払い方法に選択肢がなく、購入時に一括現金払いが通常だったようです。その頃の自分は一括で20万以上のものを購入する力はなく途方に暮れてしまいます。最終的にはお店の社長さんに直談判して月1万の分割という方法で解決しましたが、そこまでの道のりは平坦ではなく、家族の協力があり直訴・直訴の連続の末だったのです。

 補聴器を手に入れた次は、新たな戦いの幕開けでした。そう、自身の聴力に応じて補聴器をフィッティングし続けないといけないのです。はじめての補聴器は違和感だらけで、どのフィッティングが自分に最適なのか分からないし、だんだんと更に分からなくなってきます。また毎回店舗に予約して行かなくてはならず、仕事をしながらこのスケジュール調整も負担は小さくありませんでした。疲弊していく自分に、もうこれぐらいで納得するしかないのかという妥協感に包まれてきます。25万する補聴器は高額かつ高価です、それを100%納得するまで諦めたくないという気持ちはありますが、そうはいかない現実に苛むのでした。

↑実際に使用していた補聴器と僕の耳を撮影したものです。

 当時の補聴器、上記のように完全に耳掛け式のボタン電池タイプ、はじめはシーメンス製の補聴器を使用し続けていました。悩ましいのは、とにかくハウリングとの戦いであり、何かと「ピーピー」と音をたて、補聴器の位置を変えたり、耳穴の位置を変えたり試行錯誤の毎日でした。ちなみに耳穴式の補聴器も販売されていたのですが、耳掛け式と同じ効果効能であるが更に高額になります。理由は耳掛け式よりも更に小さい空間に制御機器を配置しないといけないためです。個人的に自身が難聴であるということを視覚的にも訴える意味でも耳掛け式一択でした。 

 第二章へと続く